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さあ、呼吸を始めよう。
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 生活という名の薄氷の上をかろうじて歩いている、ぼくらなのかもしれない。そこが壊れやすい薄氷とも知らずに。時には無謀にも走り、氷を踏み抜く。或いは、前から横から後ろから誰かに突き飛ばされて、暗い穴に落ちる。知らない間に開いている穴。覗き込むことすらできない、穴。いずれにしても、その先に待っているのは、躰が凍り付くほどに冷たすぎる水。それをぼくらは絶望と呼ぶ。

 ぼくのすぐ隣りでは見知らぬ人が絶望に喘いでいる。けれども、手を差し伸べることはない。誰だって知っているのだ、絶望の感染力の強さを。だから今日も見ないふりをしながら、躰を横に傾斜させながら、なんとか歩いている。多分、前方向に。

 ぼくは生活という名の薄氷の上をかろうじて歩いている。それすら幻想に過ぎないと恐怖しながら。そして、何も知らないふりをしながら。























 『さよなら渓谷』(吉田修一)を読んで。
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 美しい日本語を書けるかどうか、というような話をしていて思ったのだけれど、美しい日本語なんてものはぼくにはちょっと書けそうにない。とまあ、それはそ うなのだろうし、それでいいのだけど、その話をしたあと、しばらく一人で反芻していたら、美しい日本語というものがそもそも存在しうるか、という疑問が沸 いてきた。これはちょっとゆゆしき問題なのではと思った次第。

美しさを感じるものはたくさんある。例えば、山の上から眺める雲海とか、モネの日傘をさす女とか、ワニの待ちかまえる河に猛然と突入していくバッファローの大群とか、カノンロックとか、広隆寺の弥勒菩薩とか、まあ、たくさん。その中でも



 死んでしまった小説家の残した、未完の小説をぼくらはどう読めばいいのだろう。藤原伊織の「遊戯」を読んでそう思った。この物語は作者急逝のため未完です。

未完。未完成。未だ完成せず。本当にそうだろうか。いや、そうじゃない。まだ、ではない。もう、なのだ。もう完成しない。作者のいないそれは、もう完成することはないのである。決して。

そんな小説との初めての出会いは、太宰治の「グッド・バイ」だったように思う。タイトルがあまりに出来すぎのような気がして、そしてその明るさとのギャップに違和感を覚え、これが遺作であるとは到底思えなかった。まだ「人間失格」がそうだといわれる方が信じられた。

そして、二度目の未完小説との出会いが、藤原伊織の「遊戯」であった。太宰と藤原伊織との違いは、藤原伊織は同時代の作家だと思っていたことにある。太宰治はほとんど歴史上の人物であった。それに比べ、藤原伊織は直木賞作家であり、これからも新作を書き続け、ぼくを愉しませてくれるはずの作家だった。それのはずがいなくなってしまったのだからショックは大きい。嘘だ、と思った。思わざるを得なかった。けれど、書きかけの物語の真白が、ぼくに虚無や絶望と云ったものを感じさせた。そして、その向こうに見えるのは、やはり“死”だった。

ミステリは終わらないといけない。しかもただで終わってしまったらいけない。ぼくらは答えを欲する。読者の予想は裏切り、そして期待は裏切ってはならない。そんなアクロバティックなことに作者は腐心する。

この日記の着地点が見えてこない。

決して終わらないに終わりを告げることの出来る人はいるのだろうか。そんな人はきっといないだろう。読者にだって出来やしない。ぼくらに出来ることはきっと新しい物語を紡ぐこと。あなたが藤原伊織を好きならば、藤原伊織のその精神を繋げていかなくてはならない。それは、上手く結末を纏めることじゃあない。新たな物語を生み出し紡ぐのだ。

終わる物語なんて、どこにもない。いつか、ぼくも、死ぬ。けれど、物語は死なない。人から人へ、リレーのように。

ゴールはまだ見えない。
日本人は軽薄だ、と山田風太郎が言っていた。
確かにそのとおりだと思う。
それは、戦前も戦中も戦後も変わっていない。
それは日本人の最もいけないところなんだと思う。

日本人はファシズムが好きなのだ。

KYなんていう言葉はその際たるものだろう。
山田風太郎は数十年前にすでにぼくらを告発していた。

日本は、日本人は、これからどうなっていくべきなのかもう一度考えなければならないだろう。
できるだけ早く。
手遅れになる前に。








「日記は魂の赤裸々な記録である。が、暗い魂は自分でも見つめたくない。しかし、嘘はつくまい。嘘の日記は全くの無意味である」

(山田風太郎『戦中派不戦日記』)


珈琲は、 銀のスプーンで砂糖を溶かしているときが、一番幸せなのかもしれない。












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