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さあ、呼吸を始めよう。
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何でもいいから、生き物を飼いたい。

犬か、猫か、ハムスターか、リスか、亀かそのあたりの生き物を。

出来れば四つ足で、懐いてくれる生き物がいいなあ。

こんな気持ちになるのは、たぶん小四のとき以来のことだ。

あのときは、2ヶ月分の小遣いをはたいてミドリガメを買ったのだった。

そして、自分なりには頑張って世話をしたのだけど、亀を飼い始めてからたぶん1ヶ月か2ヶ月ぐらいだったある日のこと、それは起こった。

よく晴れた気持ちのいい日だった。

ぼくは水槽を洗おうと、まず亀を洗面器に出しておいた。

その洗面器は玄関の階段部分に置いたことをよく覚えている。

ぼくは自分のことを、亀のために大事な日曜日の昼間を割いている偉い飼い主だとニヤニヤしながら、水槽を掃除した。

水槽の内側から漂う生臭さが気持ち悪かったけれど、可愛い亀のためだと思うと頑張れた。

時折、洗面器を見るといつも亀が脱走しようとしていた。

その都度ぼくは洗面器の中央に亀を引きずり戻した。

水槽の次は砂利と石を洗った。

こっちも臭かったが、砂利の擦れるジャリジャリという音が耳に心地良かった。

これなら何時間でも洗っていられると思ったことを覚えている。

そのあとは水槽の中のレイアウトを考えるのが常だった。

どうしたら亀は狭い水槽の中で元気に生きていけるのか。

石をあっちに置きこっちに置き、ひとつがいいふたつがいい、横に置こう縦に置こうなど、ああだこうだ一人でいいながら、考えた。

そのとき、どこからか水が飛んできた。

飛んできたなんて量ではなかった。

ホースから勢いよく飛び出した水は、放物線を描いてぼくに向かってきた。

兄だった。

兄がホースを持ち、ぼくに水をかける。

ぼくは逃げ惑った。

父の車の陰に隠れてみたり、庭だけでなく前の道路まで出て水を避けようとした。

最初は楽しかったが、だんだん一方的に水をかけられるのに腹が立ち、濡れるのを覚悟で蛇口を閉めに突撃し、その遊びは終わった。

最後は腹が立ったけれど、水は冷たくて気持ちがよかった。

しかしそのせいでぼくは忘れていた。

亀が逃げだそうとしていたことを。

急いで洗面器を見るが、亀はもういなかった。

痕跡も残さず綺麗にいない。

その後二時間ほど家の周りを探したが結局見つからなかった。

当然ぼくは泣いた。

小さなぼくのトラウマの物語。

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